FX基礎知識:応用編

取引時間帯による値動きの特徴

FXトレードにおいて、「いつ」トレードするかは「何を」「どのように」トレードするかと同じくらい重要です。市場は24時間動いていますが、時間帯によって値動きの特徴は大きく異なります。取引時間帯によって相場の流動性、ボラティリティ、トレンドの強さが変化するため、これらの特徴を理解することでより効果的なトレードが可能になります。この記事では、主要な取引時間帯の特徴とその活用法について解説します。

FX市場の24時間構造を理解する

FX市場は世界中の主要金融センターが開いている時間に合わせて、ほぼ24時間稼働しています。主な取引時間帯は以下の通りです(日本時間表記)。

主要な取引時間帯

  • 東京(アジア)セッション: 午前9時〜午後5時頃
  • ロンドン(欧州)セッション: 午後4時〜深夜1時頃
  • ニューヨーク(米国)セッション: 午後9時〜翌朝6時頃

これらの時間帯はセッションのコアタイムを示していますが、実際の市場活動はそれぞれのオープン前から始まっていることが多いです。例えば、東京セッションは公式には朝9時に始まりますが、実際には朝7時頃から活発になり始めます。

重複時間帯の重要性

特に重要なのは、異なるセッションが重複する時間帯です。

  • アジア・欧州オーバーラップ: 午後3時〜午後5時頃
  • 欧州・米国オーバーラップ: 午後9時〜深夜1時頃

これらの重複時間帯は流動性が高く、大きな値動きが生じやすい時間帯となります。特に欧州・米国オーバーラップは、世界最大の2つの金融市場が活動している時間帯であり、最も流動性が高く、大きな値動きが生じやすい時間帯です。

各取引時間帯の特徴と傾向

取引時間帯による値動きの特徴 イメージ画像

東京(アジア)セッション

  • 時間: 午前9時〜午後5時頃(夏時間/冬時間共通)
  • 参加者: 主に日本、オーストラリア、シンガポール、香港などのアジア圏の金融機関、企業、個人投資家
  • 特徴:
    • 比較的値動きが小さく、レンジ相場になりやすい
    • 日本の経済指標発表に反応しやすい
    • USDJPY、AUDUSD、AUDJPYなどアジア通貨が動きやすい
    • 日本の輸出入企業による実需の影響を受けやすい

東京セッションでは、特に日本の投資家や企業の動向が円相場に影響します。欧米に比べて値動きは小さいことが多いですが、重要な経済指標発表時やイベント時には大きく動くこともあります。

ロンドン(欧州)セッション

  • 時間: 午後4時〜深夜1時頃(冬時間は1時間遅れ)
  • 参加者: 英国、ドイツ、フランスなど欧州の金融機関、ヘッジファンド、企業、中央銀行
  • 特徴:
    • 世界最大の外国為替取引量を誇る
    • 値動きが活発で、トレンドが形成されやすい
    • EURUSD、GBPUSD、GBPJPYなど欧州通貨ペアが動きやすい
    • 欧州の経済指標、ECBや英中銀の政策発表に敏感に反応

ロンドンセッションは流動性が高く、多くのトレンドがこの時間帯に始まります。特に重要な経済指標発表があるとき、大きな値動きが生じることが多いです。

ニューヨーク(米国)セッション

  • 時間: 午後9時〜翌朝6時頃(冬時間は1時間遅れ)
  • 参加者: 米国の金融機関、ヘッジファンド、企業、FRBなど
  • 特徴:
    • 米国の経済指標発表に強く反応
    • 米国株式市場との連動性が高い
    • 深夜はボラティリティが徐々に低下
    • USDJPY、EURUSD、USDCADなど米ドル絡みの通貨ペアが動きやすい

ニューヨークセッションは、米国の経済指標発表に対して最も敏感に反応します。特にFOMC(連邦公開市場委員会)の政策発表や雇用統計発表時には、大きな値動きが生じることが多いです。

時間帯別トレード戦略

各取引時間帯の特徴を理解したら、それに合わせたトレード戦略を考えることが重要です。

取引時間帯による値動きの特徴 主要市場の時間帯

東京セッションでのトレード戦略

  • レンジブレイク戦略: 東京時間のレンジの上限/下限ブレイクを狙う
  • アジア通貨ペア: USDJPY、AUDJPY、AUDUSDなどに注目
  • 重要経済指標: 日本の景気動向指数、貿易収支、日銀政策発表などを注視

例えば、東京セッション序盤でレンジが形成され、そのレンジを欧州勢が参入する午後3時以降にブレイクするパターンは頻繁に見られます。

ロンドンセッションでのトレード戦略

  • トレンドフォロー戦略: ロンドンセッションでは新たなトレンドが形成されやすいため、そのトレンドの方向に乗る戦略が有効
  • 欧州通貨ペア: EURUSD、GBPUSD、GBPJPYなどの欧州通貨ペアに注目
  • 重要経済指標: ユーロ圏PMI、英国GDP、ECB政策発表などを注視

例えば、ロンドンセッション中(日本時間午後4時〜深夜1時頃)に発生するトレンドに追随するトレードや、欧州の経済指標発表後の方向性に乗る戦略が有効です。また、日本時間深夜0時頃(ロンドン時間16:00)に行われる「ロンドンフィックス」(WMロイターフィックス)前後には機関投資家や企業の注文が集中するため、大きな値動きが発生することがあります。

ニューヨークセッションでのトレード戦略

  • 指標発表トレード: 米国経済指標発表後の値動きを狙う
  • 米ドル絡みのペア: EURUSD、USDJPY、USDCADなどに注目
  • 重要経済指標: 米国雇用統計、GDP、FOMCなどを注視

例えば、米国の重要経済指標発表後にトレンドが形成されやすく、その方向に乗るトレードが有効です。特に雇用統計発表日(毎月第一金曜日)は大きな値動きが期待できます。
ただし、指標発表に合わせてトレードを行うことは避けてください。 指標発表後にチャートが落ち着いてから参戦するのが基本です。

時間帯によるスプレッドと流動性の変化

取引時間帯によってスプレッド(買値と売値の差)と流動性も大きく変わります。

スプレッドが狭くなる時間帯

  • ロンドンセッションとニューヨークセッションのオーバーラップ時間(日本時間午後9時〜深夜1時頃)
  • 東京セッションのコアタイム(午前10時〜午後3時頃)

スプレッドが広がる時間帯

  • ニューヨークセッション終了後(日本時間午前6時以降)
  • 週末前(金曜深夜)や週明け(月曜早朝)
  • 重要経済指標発表直前・直後
  • クリスマスや年末年始などの休暇シーズン

流動性が低下する時間帯はスプレッドが広がるだけでなく、スリッページ(注文価格と約定価格のずれ)も発生しやすくなります。特に週明けは、週末のニュースを受けてギャップ(価格の飛び)が発生することがあるため注意が必要です。 スプレッドが広がるタイミングはリスク管理ができない場合も多いので、トレードを控えるのが良い選択です。

通貨ペア別の最適取引時間帯

通貨ペアによって最も活発に動く時間帯が異なります。

USDJPY(ドル円)

  • 最適取引時間帯: 東京セッション〜ニューヨークセッション
  • 特徴: 朝方の東京セッションから動き始め、ニューヨークセッションまで一日中比較的安定した値動きを示すことが多い

EURUSD(ユーロドル)

  • 最適取引時間帯: ロンドンセッション〜ニューヨークセッション
  • 特徴: 欧州と米国の経済指標に敏感に反応し、両セッションのオーバーラップ時間に最も動きやすい

GBPJPY(ポンド円)

  • 最適取引時間帯: ロンドンセッション
  • 特徴: ボラティリティが高く、特にロンドンセッション中は大きな値動きを見せることが多い

これらの特徴を理解し、トレードしたい通貨ペアに最適な時間帯を選ぶことで、より効率的なトレードが可能になります。

時間帯分析を活用した実践的トレード例

当サイトで推奨しているポンド円(GBPJPY)を例に、時間帯を考慮したトレード戦略を見てみましょう。

ロンドンオープン戦略

ロンドン市場が開く日本時間午後4時前後は、ポンド円が動き始める時間帯です。この時間帯の前にポンド円のチャートを確認し、以下のようなセットアップを探します。

  1. 前日からのレンジ相場を確認
  2. ロンドンオープン前に形成されたサポート/レジスタンスラインを特定
  3. ロンドンセッション開始後のブレイクアウトを待つ
  4. ブレイクした方向にエントリー(下位足の押し・戻りから)

特にロンドンオープン前に東京セッションで形成されたレンジをブレイクする動きは、その後のトレンド方向を示すことが多いです。

まとめ:取引時間帯を味方につける

FXトレードにおいて、取引時間帯の特徴を理解することは非常に重要です。時間帯によって変わる市場参加者、流動性、ボラティリティを把握することで、より効果的なトレードが可能になります。

ただし、FXトレードのコアになるのはダウ理論、マルチタイムフレーム分析、水平線です。
過去チャートで検証を行う時に、東京セッションや欧州セッションを気にせずテクニカル分析だけで行っても結果が出ます。
取引時間帯ごとの違いはあくまで付加要素として、自分の生活スタイルに合わせたトレード時間を考える際に参考にしつつ、コアになる部分をおろそかにしないように注意しましょう。

この記事をシェアする

おすすめ記事