
実践的ダウ理論 – プロの目線の持ち方をチャートで解説
ダウ理論はテクニカル分析の基礎であり、100年以上前に提唱された理論でありながら、今日のFXトレードにも通用する市場の本質を捉えています。しかし、教科書的なダウ理論の解釈と、プロのトレーダーが実践で使うダウ理論には微妙な解釈の違いがあります。この記事では、実際のチャートを用いながら、トレードに有効活用できるダウ理論の観点を解説します。
ダウ理論の基本原則を再確認する
ダウ理論は19世紀末にウォール・ストリート・ジャーナル創設者のチャールズ・ダウが提唱した市場分析の理論です。基本的な考え方として以下の6つの原則があります。
- 市場は全ての事象を織り込む
- 市場には3種類のトレンドがある(長期・中期・短期)
- 長期トレンドには3つの局面がある(蓄積期・参加期・分配期)
- 指数は互いに確認し合う
- トレンドは出来高で確認される
- トレンドは明確な反転シグナルがあるまで継続する
これらの原則のうち、特にFXトレードで重視されるのがトレンドの定義と継続性です。
トレンドの定義:高値と安値の関係性

ダウ理論における最も重要な概念は「トレンド」の定義です。
- 上昇トレンド:「高値切り上げ・安値切り上げ」のパターン
- 下降トレンド:「高値切り下げ・安値切り下げ」のパターン
- レンジ相場:明確な方向性のない横ばい状態
上昇トレンドでは、新しい高値が前の高値より高く、新しい安値も前の安値より高くなります。下降トレンドでは、その逆のパターンになります。
この定義は非常にシンプルですが強力で、多くのテクニカル分析手法の基礎となっています。
一般的に教えられるダウ理論の解釈
FXの入門書やセミナーで教えられるダウ理論の典型的な解釈は次のようなものです。
「上昇トレンドは、直近の押し安値を下回るまでは継続するとみなす。下降トレンドは、直近の戻り高値を上回るまでは継続するとみなす。」
この考え方では、トレンドの転換には、押し安値(戻り高値)を超える必要があります。例えば、上昇トレンドが続いている状況で、調整の下げが前回の押し安値を下回った場合、上昇トレンドの終了シグナルとみなします。
つまり、チャートが以下のような動きをした場合には、オレンジ●までは上昇トレンドとみなします。

この解釈は正しいものですが、実際のトレードでは若干の問題があります。それは「トレンド転換と判断した時点では、すでに遅い」という点です。多くの場合、より早い段階でトレンドの転換兆候を捉えることができれば、より有利なポジションを取ることができます。
プロが使う実践的ダウ理論
実際のトレードでは、ダウ理論をより発展的に解釈し、早期のシグナルを捉える工夫をしています。
ダブルトップ/ダブルボトムに注目する
プロのトレーダーは、ダブルトップ(M字型)やダブルボトム(W字型)、ヘッドアンドショルダーなどのパターンをトレンド転換の重要なサインとして注目します。特に、1時間足や15分足などの短い時間足で見られるこれらのパターンは、より大きな時間足でのトレンド転換の前触れとなることが多いです。
なぜなら、それらのチャートパターンが形成されている時には下位足ではレンジ、もしくはトレンド転換が起こっている可能性が高いからです。 そして、ネックラインを超えてもう一度戻って来る時にはロールリバーサル(レジサポ転換)でのエントリーチャンスとなります。

トレンドは小さな時間足から転換していきます。これらがその初動を捉えるための考え方です。
ただし、ターゲットとしている時間足ではトレンド転換しているわけではないので、エントリー後に狙うのはまずは押し安値(戻り高値)までとなります。
複数の時間足を組み合わせる
実践的なダウ理論の適用では、複数の時間足を組み合わせたマルチタイムフレーム分析も重要です。例えば、1時間足でダブルトップが形成されネックラインを下回っている場合。
売り転換と考えてショートを狙うのがセオリーとなりますが、上位足の4時間足や日足がどういう状況なのかによって狙いが変わってきます。

上位足の4時間足が上昇トレンドを描いている途中の場合は、1時間足のWトップからのショートは期待値が低いと言えます。

逆に、4時間足が下降トレンドを描いている時のWトップからのエントリーは、4時間足の戻り売りとなるので、その後利益が伸びる可能性が高くなります。
このように、メインとなる時間足と上位足、下位足の状況を総合的に判断してダウ理論を考えることが重要です。
押し/戻りの深さとレンジ判断
上昇トレンドにおける押しや下降トレンドにおける戻りの深さも、トレンドの強さを判断する重要な要素です。押しが浅い(前回の高値からあまり下がらない)場合は、トレンドが強いことを示しています。押しが深い(フィボナッチの61.8%以上押すなど)場合は、トレンドが弱まっている可能性があります。
相場状況によっては、押しが深い場合は「レンジ入り」と判断してトレード戦略を変更する場合があります。
実際のチャートで見るダウ理論の実践例
実際のチャートを使って、ダウ理論の実践的な解釈を見ていきましょう。
以下のチャートは2025/04/10のポンド円1時間足チャートです。

このチャートは押し安値と書いてある価格帯から一気に上昇して、上昇トレンド発生となっています。
その後の小さな押し目の◯1の場面では、当然買い目線になりますので押し目買いを狙う場面です。
では、◯2の場面はどうでしょうか?
教科書的なダウ理論であれば、ここもまだ買い目線となります。
そうすると、◯3付近の上昇を見て押し目買いをする人もいるのではないでしょうか?
そして、すぐ下落して損切りになる・・・
これはよくあるパターンですが、短期足のトレンドに逆張りをしているから起こるミスになります。
以下のチャートは同じ部分の15分足チャートです。

◯2のエリアは3時間に渡って売りチャンスがあったのが分かります。
このようにチャートパターンと短期足のトレンド転換を意識してダウ理論を活用することで、実際のトレードで正しい相場環境の認識をすることができるようになります。
ダウ理論を実践的に活用するための3つのポイント
実際のトレードでダウ理論を効果的に活用するためのポイントをまとめます。
1. チャートパターンとダウ理論を組み合わせる
ダウ理論の基本的なトレンド定義に加えて、ダブルトップ/ボトム、ヘッド&ショルダーなどのチャートパターンも組み合わせて判断すると、より早期のシグナルを捉えることができます。
Wトップなどのチャートパターンは下位足でのトレンド転換を示している可能性を感じ取ることが重要です。
2. 複数の時間足を常に確認する
一つの時間足だけでなく、常に複数の時間足を確認し、相場状況を俯瞰して把握することが重要です。1時間足や15分足で押し目買いをするときに、4時間足はどういう状況なのか?どこまで狙えるのか?
小さな時間足での反転は、大きな時間足でのトレンド転換の前触れとなることが多いからです。
3. 水平線との関係を重視する
ダウ理論と水平線(サポート/レジスタンスライン)を組み合わせることで、エントリー根拠の信頼性を高めることができます。例えば、重要な水平線を突破できずにWトップを形成した時に、その価格が上位足の戻り高値だった場合は絶好の売りチャンスとなります。
まとめ:ダウ理論はテクニカル分析の基礎であり続ける
ダウ理論は100年以上前に提唱された理論ながら、現代のFXトレードにも完全に通用する市場の本質を捉えています。特にトレンドの定義と継続性に関する考え方は、あらゆるテクニカル分析の基礎となっています。
教科書的なダウ理論の解釈を理解した上で、実践的な視点でチャートを見ることで、より早いタイミングでトレンドの転換を捉えることが可能になります。
ダウ理論を実践的に活用するためには、マルチタイムフレーム分析の視点を持ち、チャートパターンや水平線も組み合わせた総合的な判断が重要です。これらのスキルを磨くことで、プロトレーダーの目線を持ち、市場の流れを正確に捉えることができるようになると思います。