
値動きのパターン分析 – チャートが語る市場心理
FXトレードにおいて、チャートは単なる価格の履歴ではなく、市場参加者の心理状態を映し出す鏡のようなものです。この「市場心理」を読み解くことができれば、次の値動きをより高い精度で予測できるようになります。本記事では、チャートパターンの基本から実践的な活用法まで、市場心理の観点から詳しく解説します。
チャートパターンと市場心理の深い関係

チャートパターンとは、価格チャート上に繰り返し現れる特徴的な形状のことです。これらのパターンは、市場参加者の集合心理が形を変えて表れたものと考えることができます。
チャートパターンが示す市場心理
チャートパターンは「買い手と売り手の心理的な力関係」を表しています。例えば、上昇トレンドが徐々に勢いを失っていく様子は、買い手の自信が徐々に弱まり、売り手が徐々に力を増していく過程を示しています。このような力関係の変化が、チャート上に特徴的なパターンとして現れるのです。
チャートパターン分析の基本的な考え方
チャートパターン分析の基本は、以下の3つのポイントに集約されます。
- 形状認識:特徴的な形状を見つける
- 心理分析:その形状が示す買い手と売り手の心理状態を理解する
- 将来予測:心理状態の変化から次の値動きを予測する
重要なのは、パターンを単なる「形」として機械的に捉えるのではなく、その背後にある市場参加者の心理を読み取ることです。
反転パターン:トレンド転換を示す重要なサイン

反転パターンは、現在のトレンドが終わり、逆方向への転換が近いことを示唆するパターンです。主な反転パターンには以下のようなものがあります。
ダブルトップ/ダブルボトム
「M型」のダブルトップや「W型」のダブルボトムは、最も認識しやすい反転パターンの一つです。
市場心理:
- ダブルトップ:1回目の高値で売りが入ったため上昇が止まる。2度目の挑戦でも同じ価格帯かその少し下で売りが強まり、上昇トレンドが終了するサインとなる。
- ダブルボトム:1回目の安値で買いが入り下落が止まる。2度目の挑戦でも同じ価格帯かその少し上で買いが強まり、下降トレンドが終了するサインとなる。
これらのパターンが示すのは、特定の価格帯に市場参加者の共通認識(抵抗感)が形成され、それを突破できずに反転するという心理です。
特にダブルトップ、ダブルボトムのネックラインは多くのトレーダーが注目しているエントリーポイントになります。
ヘッド&ショルダー(三尊)
左肩、頭、右肩という3つの山を持つパターンで、逆ヘッド&ショルダーも存在します。
市場心理:
- 左肩では買い手が強く、上昇トレンドが継続
- 頭では買いが最大になるが、その後売りが強まり調整が入る
- 右肩では再び買いが入るが、左肩ほどの高値まで到達せず、買い手の弱さを露呈
- これによって売り手が優勢となり、下落トレンドに転換する
ヘッド&ショルダーは、買い手の力が徐々に弱まり、売り手が徐々に力を増していく過程を視覚的に表したパターンです。ダブルトップやダブルボトムの変形型と考えることもできます。
どちらも共通しているのは、価格更新に失敗して失速から反転につながるという動きです。
継続パターン:一時的な停滞後のトレンド継続を示す
継続パターンは、トレンドの途中で現れる一時的な停滞期を示し、その後同じ方向へのトレンド継続を示唆します。
トライアングル(三角持ち合い)
価格の変動幅が徐々に小さくなっていく三角形状のパターンです。高値が切り下がり、安値が切り上がって収束していく形状です。
市場心理:
- 価格変動の縮小は、買い手と売り手の力が均衡に近づいていることを示す
- この「エネルギーの蓄積期間」の後、どちらかの方向に大きく動くことが多い
- 上昇トレンド中の三角形は、多くの場合上方ブレイクして上昇継続となる
三角形は「小休止」や「エネルギー充電」の時間と考えられ、次の大きな動きの前触れとなることが多いパターンです。上位足環境を踏まえて注視しましょう。
フラッグ
急激な値動き(旗竿)の後に現れる一時的な調整パターンです。上昇トレンド中の下降チャネル、または下降トレンド中の上昇チャネルの形状を示します。
市場心理:
- 急激な値動きの後、利益確定の売りや押し目買いが入ることで一時的な調整が入る
- しかし、全体のトレンドは強く、調整後は元のトレンド方向に動く傾向がある
フラッグは、トレンドの「一時的な息継ぎ」と捉えることができ、調整後はトレンド継続となることが多いです。
ただし、これらの継続パターンを使ったエントリーは難易度が高くなる傾向があります。 当サイトのトレード手法の押し目買い、戻り売りではチャートの反転を狙ったエントリーがメインとなります。 まずは反転パターンをしっかり見落とさないようにすることが重要です。
ローソク足パターン:短期的な転換点を捉える

ローソク足パターンは、1〜3本程度のローソク足で形成される短期的なパターンで、市場心理を表すサインとなることがあります。
はらみ線
はらみ線は、次のローソク足の実体が完全に1つ前のローソク足の実体の中に収まる(はらまれる)パターンです。つまり、前のローソク足が次の日のローソク足を「はらむ」形になります。
市場心理:
- 相場の勢いが弱まっている可能性を示すサイン
- トレンドの転換点や一時的な調整のきっかけとなることが多い
包み線
1つ前のローソク足の実体を、次のローソク足の実体が完全に包み込むパターンです。
包み線は一つ上の時間足で見るとピンバーになっている可能性が高く、相場のフラクタル構造を理解できる良い例です。
市場心理:
- 市場の勢いが急激に反転したことを示す
- 特にトレンドの終盤で現れると、転換の可能性が高まる
チャートパターンの信頼性を高める3つの確認ポイント
チャートパターンを単独で判断するのではなく、以下の要素と組み合わせることで信頼性が高まります。
1. ダウ理論との整合性
FXトレードの基本となるダウ理論との整合性を確認します。例えば、上昇トレンド中に発生したフラッグパターンは、ダウ理論の「押し目」に向けた調整と考えられます。 フォボナッチ・リトレースメントや水平線を使った押し目候補の価格帯でのフラッグ終了は、トレンド継続の可能性が高まります。
2. 水平線との関係
例えば、重要なレジスタンスライン近辺でのダブルトップはチャートがそこから反落するサインとして考えることができます。
3. マルチタイムフレームでの確認
上位足でもパターンが確認できるか、または上位足の傾向とパターンが示す方向が一致しているかを確認します。例えば、4時間足でヘッド&ショルダーが形成され、日足でも下落傾向が見られる場合、そのパターンの信頼性は高まります。
パターンで失敗するケースとその対処法
チャートパターンは100%の精度を持つものではなく、失敗することもあります。失敗パターンへの対処法を知ることも重要です。
偽ブレイクアウト(ダマシ)
パターンが一方向にブレイクしたように見えて、すぐに反転するケース。
対処法:
- ブレイクの確認を慎重に行う(ローソク足の確定を待つ等)
- 下位足でのレジサポ反転など複数の根拠で判断する
パターン形成途中での崩壊
パターンが完全に形成される前に、価格が大きく動いてパターンが崩れるケース。
対処法:
- パターンが完全に形成されるまで待つ
- 下位足でのチャートの動きから、パターン崩壊の予兆を察知する
実例:GBPJPYチャートでのパターン分析
当サイトで推奨しているポンド円(GBPJPY)を例に、パターン分析の実践例を見てみましょう。 以下のチャートは2025/04/28の1時間チャートです。

出来上がったチャートを見ると、赤枠の部分がきれいな押し目になって上昇しているのが分かります。 これを一つ下の15分足で見てみると以下のようになります。

赤枠の中では青ラインで引いたようなWボトムが形成されています。
そして、赤枠下限にある青い水平線は1時間チャートの押し安値になる価格帯です。
青▼の部分では細かく見ると高値を更新しています。 この場合、そのすぐ後の赤丸がベストの買いエントリーポイントとなります。
そのタイミングを逃した場合は、2番目や3番目の赤丸でもかまいません。 ここはWボトムのネックラインとなる場所で、反転上昇のきっかけとしてとても有望なエントリーパターンになります。
もちろんこの背景には、4時間や日足が上昇中であるという相場環境の認識もあります。
このようにマルチタイムフレーム分析とダウ理論、水平線にチャートパターンを加えることで、エントリー根拠が明確になることが分かります。
トレードで最も重要なダウ理論、マルチタイムフレーム分析、水平線については以下の記事の解説も参照してみてください。
まとめ:パターンが教えてくれる次の一手
チャートパターンは市場参加者の集合心理を視覚化したものと捉えると、その真価を発揮します。単に「形」を追うのではなく、なぜそのパターンが形成されるのか、どのような心理状態を反映しているのかを理解することが重要です。
当サイトで重視するダウ理論、水平線、マルチタイムフレーム分析と組み合わせることで、より確かな根拠に基づいたエントリー判断が可能になります。
チャートパターンを学び、市場参加者の心理を読み解く力を養うことで、より洗練されたFXトレードが可能になります。まずは多くの過去チャートの観察から始め、過去の値動きの事実を知りましょう。 そうすれば、リアルトレードでも自信を持って活用できるようになります。