
移動平均線の正しい使い方 – ゴールデンクロスで勝てるのか?!
FXトレードを始めると必ず出会う指標の一つが「移動平均線(MA)」です。多くの入門書や解説サイトでも基本中の基本として紹介されており、特に「ゴールデンクロス」や「デッドクロス」といったシグナルは初心者にも分かりやすいため人気があります。しかし、この単純な指標は本当に利益を生み出せるのでしょうか?今回は移動平均線の基本から実践的な活用法、そして「ゴールデンクロスで勝てるのか」という疑問について徹底解説します。
移動平均線とは?その基本と種類
移動平均線とは、一定期間の価格の平均値をつないだラインです。チャート上の価格変動を「平滑化」することで、相場のトレンドを視覚的に捉えやすくする役割があります。主な種類は以下の通りです。
1. 単純移動平均線(SMA)
最も基本的な移動平均線で、指定した期間の価格を単純に足して平均を取ります。例えば20日SMAなら、直近20日間の終値の平均値を計算します。
2. 指数移動平均線(EMA)
新しいデータに重みを置いて計算する移動平均線です。SMAよりも価格の変化に敏感に反応するため、トレンド転換の早期発見に役立つとされています。
移動平均線で信じられている一般的なシグナル
多くの解説書で紹介されている移動平均線のシグナルには以下のようなものがあります:
1. ゴールデンクロス・デッドクロス
短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜ける「ゴールデンクロス」は買いシグナル、上から下に突き抜ける「デッドクロス」は売りシグナルとされています。例えば、5日MAが20日MAを上抜けるゴールデンクロスは上昇トレンドの始まりを示唆するとされます。
2. グランビルの法則
移動平均線に対する価格の位置関係から相場を判断する手法です。例えば、「価格が移動平均線を下から上に抜けた後に調整し、移動平均線で反発すれば買い」というようなルールがあります。
3. トレンド判断
価格が移動平均線の上にあれば上昇トレンド、下にあれば下降トレンドと判断します。また、移動平均線自体の方向も重要視されます。
ゴールデンクロスで本当に勝てるのか?

「ゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売る」というシンプルな戦略は古くから知られていますが、実際のトレードで単体の指標として使用すると、多くの場合期待外れの結果になります。その理由を検証してみましょう。
1. 後追い指標である事実
移動平均線は本質的に「後追い指標」です。過去の価格を基に計算されるため、クロスが発生した時点では、すでにトレンドが形成された後であることが多いです。特にレンジ相場では、クロスが発生しても直後に反転するケースが頻発します。
2. レンジ相場での罠
市場の約70%の時間はレンジ相場と言われています。レンジ相場ではゴールデンクロス・デッドクロスが頻発し、その多くは「偽シグナル」となります。レンジの上限や下限でクロスが発生した後、価格が反転することで損失を被るケースが多いのです。
3. 実験的検証
20日と50日の移動平均線のクロスだけでエントリーする単純なシステムをバックテストすると、一般的に以下のような結果が出ます。
- 勝率:約40-45%
- 利益率:レンジ相場では負け越し、強いトレンド相場でのみプラス
つまり、ゴールデンクロスのみでトレードすると、長期的には利益を出しにくいのが現実です。
トレードにおける移動平均線の役割
当サイトで推奨するテクニカルトレード手法では、移動平均線はあくまで「補助的な指標」として位置づけています。重要なのは以下の3つの分析要素です。
- ダウ理論:市場のトレンドを理解するための基本的な考え方
- 水平線:過去の重要な価格帯を示すサポート・レジスタンスライン
- マルチタイムフレーム分析:複数の時間足で相場環境を把握する手法
これらを組み合わせた上で、移動平均線は次のように補助的に活用します。
なお、ダウ理論や水平線は以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてみてくだささい。
20MAの活用法
当サイト推奨のチャート設定では、特に重視するのはサイト名にもなっている20期間のSMA「20MA」のみです。複数の移動平均線を表示して複雑にするのではなく、時間軸を変えた20MAを使用します。
例えば1時間チャートの場合、
- 1時間足の20MA
- 4時間足の20MA(=1時間足の80MA)
- 日足の20MA(=1時間足の480MA)
を表示させる。 このシンプルな設定により、異なる時間軸のトレンドを1つのチャートで確認できます。
具体的な活用例
移動平均線は主に以下のように活用します。
- トレンド方向の確認:短期MAの傾きで直近のトレンド方向を確認
- エントリー判断の微調整:例えば、ショートエントリーを検討している時に20MAが上昇中であれば、グランビルの法則に従い、価格が20MAを下抜けた後の戻りを待つなど
- サポート・レジスタンスとしての機能:特に強いトレンド中は20MAがサポートやレジスタンスとして機能することがある
なぜ「補助的」に使うのか?
移動平均線はご存知のように、集計期間の設定があります。 では、あなたはいくつに設定しますか? 世の中には25MAを使う人、75MAを使う人、5MAを使う人もいます。期間の設定が変われば、当然MAの形状も変わります。上昇が下降に変化するタイミングも変わります。 つまり、人が入力できるパラメータを持つ指標は再現性にバラツキが出る可能性があるということです。 これが、MAをトレード判断のメインに使わない理由です。
20期間に設定する理由は、4週間(≒1ヶ月)の稼働日が20日であることや、ボリンジャーバンドなどの人気のあるインジケータでもよく使われることなどが上げられます。 しかし、重要なのは自分なりの活用方法とスタイルを固定するということです。数値は20でも21でもそんなに大きな意味はないのです。
移動平均線を効果的に活用するポイント
移動平均線をより効果的に活用するためには、以下のポイントを押さえましょう。
1. 相場環境との組み合わせ
移動平均線は、ダウ理論や水平線で把握した相場環境を補強する形で使います。 例えば以下のとおりです。
- 上昇トレンドと判断した場合:20MAからの反発を買いエントリーの一つの根拠として活用
- レンジ相場と判断した場合:MAは使わず、水平線でのレンジトレードを優先
2. マルチタイムフレームでの整合性
当サイトで推奨するマルチタイムフレーム分析では、複数の時間軸での移動平均線の位置関係も重要です。 例えば以下は一例です。
- 日足20MAが上向き+4時間足20MAが上向き+1時間足が20MAを上抜けた状態なら、上昇トレンドの可能性が高い
- 各時間足のMAが方向性を一致させている時は、トレンドが強い可能性がある
3. 単独指標としないこと
最も重要なのは、移動平均線を単独の売買シグナルとして使わないことです。あくまで他の分析と組み合わせた「補助的な指標」として活用しましょう。
まとめ:移動平均線は万能ではない
移動平均線、特にゴールデンクロスやデッドクロスは初心者に人気のある指標ですが、それだけで勝てる可能性は低いです。特にレンジ相場では多くの偽シグナルを出すため注意が必要です。
当サイトでは、移動平均線はあくまでダウ理論、水平線、マルチタイムフレーム分析を補助する指標として位置づけています。20MAを効果的に活用しつつも、他の分析要素との整合性を確認することが、より精度の高いトレードにつながります。
次回は「損切りと利確の正しいタイミング – 初心者の致命的ミスを防ぐ」について解説します。移動平均線を含むテクニカル分析から得られたエントリーポイントをどう活かし、リスク管理するかについて詳しく見ていきましょう。お楽しみに!